QCサークル 2024年4月号(No.753)


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追記するしかなかったのです。しかし,これでは本末転倒です。まったく必要ないムダを押しつけてしまっていたのかもしれません。このようないくつかの事例がきっかけとなり,研究を開始して施策実行型QCストーリーが生まれてきました。1.改善の基本ステップ改善の定義を考えたことはありますか?もちろんJIS規格,日本品質管理学会や専門書には改善の定義が示されています。個人的に「改善とは,よい方向に変えること」と定義づけしています。それは,問題解決型QCストーリーなどのような改善の手順に沿って改善するものだけではなく,問題に気づいた瞬間に対処方法がわかる改善やムダ取り改善なども立派な改善だと考えているからです。また,改善に取り組むということは,不良率,生産性,事故件数など,「改善によってよくしたい対象」があるということです。よくしたい対象が存在しなければ,我々はあえて時間や労力を費やしてまで改善に取り組む必要などありません。ポイントは,必ず「改善によってよくしたい対象」があるということです。このことを専門用語では,管理特性といいますが,とっつきにくい方もいるかもしれませんので,ここでは“改善対象”と呼ぶことにします。すなわち,改善によってよくしたい対象である改善対象をよくしていくことが改善といえます。施策実行型QCストーリーは問題解決型QCストーリーにとことんこだわって取り組んだ結果,生まれてきた改善のやり方です。課題達成型QCストーリーほど爆発的な展開はなかったですが,徐々に日本全国に広まり多くのサークルで活用していただけるようになりました。ところが,施策実行型QCストーリーの使い方を誤って紹介されたり,勘違いして使用しているケースが目につくようになりました。施策実行型QCストーリーの開発者の一人として,見て見ぬふりをするわけにはいきません。そこで,図・1に示すような改善の基本ステップを考案し,セミナーや研修などで施策実行型QCストーリーのポイント説明に活用しています。「よい方向に変える」ためには,正しい対策を打つことが必要です。そのために必要なのが,図・1の真ん中にある「対策を打つべきターゲットを明確にする」ことです。問題解決型QCストーリーで考えるとわかりやすいでしょう。問題解決型QCストーリーでは,「要因の解析」というステップにおいて,悪さをしている原因を追究して,その原因を取り除く対策を実施しているのです。すなわち,「原因=対策を打つべきターゲット」です。一方,施策実行型QCストーリーにおいては,「現状の把握」から見えてきた“わかったこと”から素直に対策を打つべき方向性が導き出せる場合に,「対策のねらい所」を書き出すという手順になっています。すなわち,「対策のねらい所=対策を打つべきターゲット」です。図・2に問題解決型QCストーリーの基本骨格を,図・3に施策実行型QCストーリーの基本骨格を示します。現状の問題点の見極め現状の把握対策を打つべきターゲットの明確化対策の検討と実施要因の解析対策の検討と実施図・2問題解決型QCストーリーの基本骨格現状の問題点の見極め現状の把握対策を打つべきターゲットの明確化対策の検討と実施対策のねらい所対策の検討と実施図・3施策実行型QCストーリーの基本骨格改善の基本ステップ標準化する標準化するテーマの目的を明確にする現状レベルを現状の問題点把握するの見極め管理技術対策を打つべき原因攻め所ターゲットをを明確にする明確にする固有技術効果を確認する対策を検討対策を検討実施する実施する目標を設定し計画をたてる目標を設定する図・1改善の基本ステップ(図2,3の出典:山田佳明編著,須加尾政一,松田曉子著『テーマ選定の基本と応用』,日科技連出版社,2016年,p.35,p.39)56QCサークルNo.753


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