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過去に経験済みの問題をたくさん集めて横並びにしてみると,同じようなことが繰り返し起こっていることに気づきます。どこかに集中しているわけではないのですが,いくつかの典型的な「失敗の型」があることがわかります。したがって,この共通性をうまく活用してやれば,失敗しそうなところに気づくことができます。具体的には,典型的な「失敗の型」を一覧表にしたうえで,これを片手に対象となる仕事や設備・機器を見て,起こりそうな問題をあげることになります。この場合,対象となる仕事や設備・機器を曖昧にとらえていたのでは起こりそうな問題に気づきません。対象を図や表により「見える化」し,一つひとつていねいに当てはめて起こりそうな問題を考えていくことがポイントとなります(図・2左側参照)。このようにして洗い出した起こりそうな問題は,影響が大きいものに絞っても結構な数になります。未然防止のためには,これらの問題すべてに対して対策を考案する必要があります。一つ対策を考えるのでも大変なのに,どうやったらそんなにたくさんの対策を考案できるのかと思うかもしれません。ところが,これらの問題は,すべて誰かが過去に経験し,対策を検討したことのあるものです。このため,自職場やほかの職場・会社で過去に考案・実施され,有効であることが判明した対策を「対策発想チェックリスト」や「対策事例集」として整理しておき,うまく活用すれば,短時間で効果のある対策を見つけることができます(図・2右側参照)。過去に経験済みの問題失敗モード(型)一覧表過去の有効な対策対策発想チェックリスト対策事例集…+…起こりそうな問題起こりそうな問題対策が必要な問題対策が必要な問題起こりそうな問題起こりそうな問題対策が必要な問題対策が必要な問題製品・サービス,仕事,設備・機器製品・サービス,仕事,設備・機器図・2未然防止の基本的な進め方特集未然防止はそんなに難しくない3.未然防止型QCストーリーの活用図・2を見ると,未然防止は何も目新しいことではなく,ある意味私たちが当たり前のこととして自然に行っていることともいえます。ただし,個別の問題を追いかけるのに忙しい日々を過ごしていると,なかなかモグラたたきの状態に陥っていることに気がつきません。表・1は,このような思いから『QCサークル』誌2008年1~6月号の連載講座の中で提案された「未然防止型QCストーリー」のステップと各ステップで使用できる手法をまとめたものです。詳しく知りたい人は,2016年7~12月号の連載講座のほか,その内容をまとめた「こんなにやさしい未然防止型QCストーリー」(日科技連出版社)という本も出ていますので,ぜひ勉強してみてください。表・1未然防止型QCストーリーステップ1.テーマの選定2.現状の把握と目標の設定3.活動計画の策定4.改善機会の発見□過去の経験済みの問題の収集と類型化□起こりそうな問題の洗い出し5.対策の共有と水平展開□過去の有効な対策の収集と整理□対策案の作成と評価・選定・実施6.効果の確認7.標準化と管理の定着8.反省と今後の課題活用できる手法失敗モード一覧表プロセスフロー図/機能ブロック図FMEA(失敗モード影響解析)RPN(危険優先指数)対策発想チェックリスト対策事例集(データベース)対策分析表この表の手順を従来の問題解決型QCストーリーと比較すると,ステップ4「改善機会の発見」とステップ5「対策の共有と水平展開」が大きく異なっていることがわかります(問題解決型QCストーリーでは,それぞれ「要因の解析」と「対策案の検討」となっていた部分です)。この2つのステップが未然防止の中核になる部分です。言葉が少しわかりにくいのですが,要は図・2の左側と右側を行うことだと考えてください。未然防止の基本がわかったところで,次ページからは未然防止に取り組んでいる職場の事例を見てみましょう。(中條武志)2024年1月号11