QCサークル 2023年3月号(No.740)


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撹拌作業をさらに細分化して調査したところ,コート液の材料である箔を切断する「箔切断作業」,容器に投入し密閉する「箔投入作業」,撹拌して箔を溶解させる「箔溶解作業」の3つの作業があり,それぞれ表・1のような作業時間がかかっていました。まず,すぐできることをやってみて,その結果を基に成功シナリオを追究することにしました。表・1作業時間の明確化所要時間時間現状目標ギャップ項目作業内容箔切断作業箔投入作業箔溶解作業材料の箔を10㎜幅で罫書き(マーキング)しハサミでカットするエタノールが入った容器のふたを開け,エタノール2ℓに箔を1枚投入する箔が溶解するまで待つ所要時間合計体験事例1全体の作業分析の後,作業内容の明確化をして,段階的に深掘りしている点は参考になります。積上げ棒グラフで確認するよりパレート図で示したほうが説得力があったように思います。*学びどころ*(1)箔切断作業のすぐやる改善現在は10㎜間隔に罫書き(マーキング)し,ハサミで1枚ずつ切断しています。重ねて切断すれば時間短縮になるという発想から,裁断機で重ねて切断」を試してみたところ,4枚までなら重ねて切断可能であることが判明しました(図・3参照)。裁断機で試験枚数23456○○○××裁断可否裁断精度×××――――図・3裁断機での裁断試験評価しかし,重ねていることで箔が滑ってずれてしまい,切断精度(10±1㎜)が確保できませんでした。ずれないようにすることが必要という課題を発見できました。2023年3月号33従来型の二次電池のほとんどは,電解質が液体でできており,この液体には危険物質が多く含まれています。また,電解液の液漏れによる発火事故なども報告されています。近年の研究で,この電解質を液体ではなく固体化できる技術が確立され,電池が壊れても液体が飛び散らないことから,安全性の高い全固体電池が普及するようになりました。また,大容量な製品を製造可能で,一度の充電で長時間使用できるメリットもあり,自動車やスマートフォンなど,広く利用されるようになりました。固体電池は,電極と電解質の間にできる,電極界面抵抗という薄膜によってイオンの伝導を妨げることが知られています。この現象を抑制するための重要な材料にコート液があります。コート液は特殊な物質で作るため,私たちの職場では,外部施設を借用して作製し,職場に持ち帰った後,調合してセル(一つの電池構造)に加工して試験します。外部施設を借用するためコストがかかるうえ,生産効率もよくありません。そこでコート液作製手順に従って作業時間分析を行ったところ,コート液作製時間(9時間)のうち,撹拌作業に6.5時間(72%)かかっていることがわかりました(図・2参照)。(時間)合計9時間□月□日作製作成者:○○設備操作梱包準備撹拌現在の作業時間図・2現在の作業時間内訳生産効率を倍増するためには,9時間の作業時間を4.5時間にする必要があり,この撹拌時間を4.5時間短縮するように目標を設定しました。攻めどころの明確化と対応策作業時間のネックになっている6.5時間の


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