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特集進化するQCサークル活動(小集団改善活動)QCサークル活動に求められる進化5.このような経営環境の変化を踏まえて,今後,QCサークル活動(小集団改善活動)をどう進化させていけばよいのでしょうか。いろいろな考え方ができますが,顧客・パートナーなどを含んだ「多組織横断」の活動が重要になってくると思います。ここでは,必要な知識・スキル・権限を持った,異なる組織のメンバーが集まって特定の課題・問題の達成・解決を目指す時限型の活動のほか,委員会・協議会などを設けて中長期的な視点で関係性の構築・改善を目指す継続型の活動の両方が求められます。また,当然ですが,このような取組みを進めるには,事業全体のありたい姿を定め,関係する組織・人々の間で共有すること,そのうえで,目的・目標・方策を方針管理の仕組みを使って展開し,具体的な改善活動につなげていくことが必要です。ただし,このような「変える活動」を,重点指向で行うためには,変える必要のない部分を明確にし,標準化と日常管理を徹底することが大切です。さらに,ありたい姿の達成に必要な組織の能力,それを支える個人の能力を明確にしたうえで,QCサークル活動(小集団改善活動)を通じて能力向上と参画する人の満足を同時に実現する取組みが求められます。そんな進化が期待されているのが今の時代ではないでしょうか。みなさんも,今後どんな進化が起こるのか,ぜひこの機会に考えてみてください。参考文献[1]中條武志・安藤之裕・杉浦忠・須藤ゆかり・羽田源太郎・米山高範(2003):“進化したQCサークル活動”,『QCサークル』誌,3月号No.500.[2]日本品質管理学会・小集団改善活動研究会(2009):「開発・営業・スタッフのための小集団プロセス改善活動」,日科技連出版社.(中條武志)2022年12月号11e-QCCを実現する方法3.一般的なモデル,職場別モデルを参考に自組織の活動を進化させようとする場合,新しい進め方を実現するための具体的な方法を知っておくことが大切です。図・3は,これらを,e-QCCを支える9本の柱としてまとめたものです[2]。9本の柱は,図・2のポイントと密接な関係があります。たとえば,「重要課題・問題の選定」を実現する具体的な方法が「方針管理・日常管理で問題を顕在化」ですし,「柔軟なグループ編成」には「職場・継続型と横断・時限型を併用」が対応します。組織内での位置づけを明確にする相互学習により活動を活性化する水平展開・応用展開・上方展開を促進改善能力・運営能力を評価・向上する多様な改善のステップやツールを活用職場・継続型と横断・時限型を併用方針管理・日常管理で問題を顕在化業務プロセスと質を見える化するコミュニケーションの基盤を作る図・3e-QCCを実現する方法4.最近の経営環境の変化最近の経営環境の変化を見ると,製品・サービスの提供に留まらず,顧客・社会の課題を解決する「コトづくり」が求められています。また,これを一つの会社・組織で実現するのは難しいので,顧客やパートナーとの協力・連携が必要になっています。さらに,そのような中,ますます複雑化する仕事のプロセスを効果的・効率的なものにするために,急速に発展している情報技術を活用することが期待されています。みなさんもDXやニューノーマルという言葉を聞くことが増えたと思います。そして,働く人の価値観が多様化する中で,上記のことが行える人を育て,組織の能力を高めていかなくてはいけません。