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連載講座2.家族で魚釣り大会に出かけたここでは,前回にも登場した稔さんご一家が,海上釣り堀で開催された魚釣り大会に出かけた時の話と長女・恵ちゃんの学校における授業の話をご紹介しました。どうでしたか。こんな話が「QC的手法とは?」に関係があるとは思えなかったでしょうか。でも,意外と関係しているのです。以下,少し考えてみましょう。2.1ID野球今の若いみなさんには古い話なのですが,かつてある球団を日本一に育て上げた某名監督の提唱した考え方に“ID野球”という考え方がありました。そこでいうIDとはImportantDataという意味で,従来の経験や勘を大切にした野球から,データを重視した野球への転換を主張されたものです。私たちが日常生活や会社の業務において問題に遭遇した時,最初に考えることは,これまでの経験に基づく解決策であったり,特別な根拠のない勘であったりすることがあります。たしかに,経験や勘によって成功することがないわけでもないのでしょうが,名監督は成功確率を高めるためにはデータを重視することが大切であると主張されたのです。(1)データとはところで,データとは何でしょうか。「データdataとはdatumの複数形である」とする伝統的な考えもあるのですが,今日では情報Informationと同じ物質名詞と考える傾向が強く,一般にも単数扱いをする方が多いと思います。データの代表格は,新大阪駅から東京駅までの新幹線自由席料金やコロナ陽性判定に伴う欠勤者数などといった,数値で表される数値データですね。新幹線自由席料金のような(理論的には)連続的な値をとるデータを計量値データ,欠勤者数のように離散的な(トビトビの)値をとるものを計数値データと呼んで区別しています。しかし,Informationと同じ物質名詞と考えるのであれば,お客様からの褒め言葉や上司のアドバイスあるいは昔の成功体験から生まれるアイデアなどもデータの仲間の一つで言語データと呼ばれています。その中でも,お客様からの褒め言葉は事実データ,上司のアドバイスは意見データ,経験から生まれるアイデアは発想データなどと区分されています。(2)釣り糸が切れた理由漫画にあった釣り糸の強さの話をしたいと思います。崇くんは大物と思われる魚が針にかかったのでゆっくりとリールを巻いていたのに“プツリ”と糸切れが起こってしまいました。そこで,母の安子さんによるアドバイスで2倍の強さを持つ釣り糸に交換したのですが,糸切れが再発してしまい,父の稔さんから“釣り糸の品質が悪い”という話を聞かされることになってしまいました(図・1参照)。図・1を見ると,釣り糸の強度ばらつきが極端に大きいという印象はなく,局所的に大きなばらつきのある部位が発生していることがわかります。このような特定の除去すべき原因によるばらつきを「異常原因によるばらつき」といい,そうでないばらつきを「偶然原因によるばらつき」といって区分することが,品質管理における重要なQC的なものの見方・考え方なのです。年月号47